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手創りの会通信

手創りの会通信 Vol.42 ドアの向こう側に・・

2009年4月25日

2009年4月25日

講師:大沢則夫先生

参加者:栗間、大沢(も)、石水、石渡、太田、赤松(文責)※敬称略

【ドアの向こう側に・・・】

(赤松)大沢先生の指示で、一度部屋を出てから、再びドアを開けて入ってくる。
その他のメンバーも同様に、ドアを開けてみる。
最後に、大沢先生がやってみせる。
・・・ドドドッと足音がして、バタンとドアが急に開く。

(赤松)「大沢先生のやった『入って来かた』は、勢いを感じました」
(大沢先生)「今のは、あなたの真似したんだよ」
(赤松)「・・・え?(。。;)」―――――

「かつての鍼灸あんまの資格試験といえば、盲人の試験官を相手にした、
実技試験があったんですよ。そこでは、まず『挨拶』なんです。
目の見えない相手に対しても、スーツなりフォーマルな格好をして、
ドアをノックして、声が聞こえてから入る。鍼は『立てばいい』だったんです。
だから、テクニックは今の皆さんの方があると思うんですよ。ディスポの鍼も有るしね。
・・・それよりも大事な事は、ここ(治療院)にいるのは、
具合の悪い人、感受性が強い人、ということ」

○患者さんに余計な気を起こさせない。
「患者さんの聞こえるところ、見えるところで鼻をかむ、爪を切るなど・・・
こういう些細なことも、それを気にする人の目線で、最低限の所作をしなくては。」
「それだから、ドアから入るにしても、『ノックさえすればいい』ではダメ。
中で何をしてるかわからないでしょう。むしろ、そこで待ってて、
タイミングを見計らってからはいった方がいい。そうしないと、
入った瞬間『ズブッ』と刺される。それが武道の世界。
いきなり入ると言うことは、まだその怖さを知らないわけだ。
入り口から『入る、出る』ということは、ひとつの空間から異空間に行くわけだ。
そこに『差』がある。その瞬間瞬間に身構えていかないと。
例えば、患者さんとこちら側とを仕切るカーテンを、『いいですか?』と言っておいて、
すぐバァッと開けちゃう事になる。返事も待たずに。
・・・本来、鍼灸学校では、そこを教えなくてはいけないんだけどね。」
「大事なのは、患者さんに余計な気を起こさせないで、ともかくくつろいでもらうこと…」

○『治す』には・・・まず、ことばで治す ⇒(それがダメなら)触って治す ⇒ 
  ⇒ お灸・温灸をする ⇒ 散鍼(刺さない鍼)をする ⇒鍼を刺す ⇒薬を飲ます⇒ 
  ⇒ 医者に行ってもらう ⇒ 最後は、坊さんにたのむ・・・ことばで治せたら最高 

○「治ろう」とする方向を、邪魔しない手を作り、邪魔しない方法を考える。
一番は、病んでいく「生活習慣」を変えてもらうこと。
治療家はその時のアドバイザーでしかない。
ところが、そういう事(邪魔しないでアドバイス)をするときに、
非常に「間合い感覚」が必要になる。
(間合いを計らずに空間に飛び込む、ということは)昔であれば、
命がいくつあっても足りない行為だ。
もしかしたら、反対に相当殺してしまっているかもね。
見えない世界に何が起こっているのか?
そして、そこに自分が突っ込んでいいものか?・・・それを考えたうえで
行動しないと、危ない。」

【治療: 仰臥位(あおむけ)での動きと治療】

○仰向けで・・・膝関節90度、股関節45度、足関節135度屈曲・・・は、
 理想的(基準になる)な角度。(図1)
この姿勢から、体がどう動くのか?を評価する。
(ただし、関節の拘縮している人は、背中から全部いっしょに動いてしまう)
(図1の姿勢から)両膝を固定して、左右に倒す。(股関節の屈曲+内・外旋)

①股関節45度で ②両かかとを殿部につけて ③膝を鈍角にして 
・・・①~③、各々どのくらい倒れるか?左右差を見る。
健康な人でもけっこう左右差はある。

○この時「膝の倒し方」は「中心軸」をずらさずに股関節を動かす。
すると気持ちいい。膝を左右に押し倒すだけだと、殿部が大きく床から浮いてしまう
腰椎が一緒に回旋している)腰の痛い人はつらい。
・・・「中心軸」の背骨をそのままに、股関節を動かすには?

○操体法を使って治療
上の方法で左右差を見たあと、①~③の姿勢で、膝が
倒れやすかった方向」に倒してもらい、それに対して術者が抵抗を加える。
そして、術者が力を抜くと同時に、患者も瞬間的に脱力する。これを三回くらい。
すると、倒れにくかった方向へ、倒れやすくなる。
腰痛の人には、痛みが出て力が入らないためやりにくい姿勢もある。
しかし逆に、その姿勢が出来るようになっていけば、治療の効果が現れたということ。
他にも、股関節の両外旋(外開き)、両内旋(内また)、それに加えて、
腰を浮かせてバタンと落とす動きも、先ほどの、抵抗+瞬間脱力で行う。
どんどん状態が変わっていく。

○痛みから逃れる動きをさせる
例えば、ひかがみ(膝の裏、委陽・委中)を左右に切ってみて、痛がるとき。
その時の動きは「その痛みから逃れようとする」動き。
今度は、その動きをしてもらい、抵抗+瞬間脱力。
すると委中の痛みが軽くなっている。
急性の腰痛のような場合。腰に触れられないような場合にも、この方法は使える。
ただし、操体法を使える患者さんは、かなり『優秀な患者さん』。
まず、体をそのように動かせる人。そして、言葉で誘導のできる人。
操体法は、瞬間脱力だから言葉を理解してもらわないと難しい。

○最終的には「首」を柔らかくする。
足からずっと追っていって、最終的には頚部にくる。
「首」が一番大事。ここまで来て首が硬いままだったら、
後頭部の「風池」などを取ってやる。
表面的には、前側には胸鎖乳突筋。後ろは僧帽筋といった筋が、
頚の前後屈に関わっている。

○足の状態を変える。
硬い足の裏の状態を、赤ちゃんの掌のようにふわふわに
なるように、ほぐして、肉を持ってくる。中足骨、足根骨を動かして、
柔らかい足をつくる。タコが出来たごわごわな足ではダメ。                                 

以上