手創りの会通信 Vol.47 基本
2009年9月26日
2009年9月26日
参加メンバー:赤松、石水、石渡、伊藤、太田、大沢、栗間
佐々木、佐藤、塙、藤本
講師:大沢 則夫
初参加、参加されて間もない方が多いので、治療の基本を指南。
(以下お話の中から適当に抜粋、まとめ)
1.みんなで肩の軽擦
慣れた方と新しい方でペアになり、肩から肘まで軽擦。
3回くらいで交替してゆく。
☆良い手と良いさわり方がある。
でも、みんな手自体は悪くない。手の感触は。
要は使い方、触り方。
★目指すは猫の手。
何とも言えない柔らかさ。
乗られて移動されるあの瞬間。
行ったりきたりしてもらいたい。
忙しくなくてもネコの手を借りたい。
あれだけ素足であるいて、タコができてるネコはいない。
☆ただ置いておくだけから始める。
肩に載せる手は労宮と肩井。
そこから微妙に一つずつずれてゆくだけの話。
その点が一つずつ連続で線になってゆく。
相手の固さをほぐしてあげるように軽擦する。
そうしていると、相手の身体が解ってくる、一緒に馴染んでゆく。
★雑にやってはダメ。
手が重たくてもだめだし、軽くてもだめ。
肘が力み過ぎてもだめ。
緊張してると疲れてしまうし、指、手、という感じになってしまう。
力を抜く、チカラを抜く、リキミを抜く。
手を置いて、自分の体を動かす。
重さを感じさせない。
☆手が浮いちゃう人。
手は柔らかいけども、触れようとした瞬間に隙間ができちゃう。
母指球と小指球だけ着いて真ん中が浮いちゃってる。
手をセンサーにして、相手から情報をもらう感じ。
治そうとは考えないで、むしろ馴染んでゆく。
(先生に手を治してもらうと)手はピタッとする。
アイロンかけのようにピタッと着ける。
★親指を使いすぎている人。
テクニックや経験があっても、もう一回素直な気持ちでやる。
ただ、置くだけ。
そしてただゆすってあげるだけでも気持ちよい
☆ドーンといっちゃう人。
一番最初に置く、触れる瞬間に、人生の全てをかけて触れるくらいの注意力が
必要。
ゆっくり慎重に、慈石で砂鉄を吸い寄せる感じで、スーっと流す。
片方の手を置いて軽擦しても良い。
しわを伸ばすように。
★相手との距離も大事。
近すぎると、ものすごいエネルギーを感じる。
特に異性の場合は。
だから術者は中性になんなきゃいけない。
でも時に異性になる必要がある。
☆終りも大事。
軽擦の終りが、べちゃべちゃべちゃとなってはいけない。
ピシッと抑えると、メリハリが付く。
軽擦の最後が、曖昧になっちゃいけない。
★見ている人。
待ってる人はみんなの動きを見ている。
動きを見ただけで良いか悪いかわかってくる。望診。
受けてる人が喜んでいるか嫌がっているか。
触れた瞬間、そこが勝負。
☆一通り終わって。
最初の感じとどう変ったか?
数やるだけでもどんどん変ってくる。
手づくりはともかくどんどん触っていくことが大事。
だんだんお互い元気になってゆくように。
2.治療の基本
★昨日。
3時半に太極拳が終わって5時まで5人。
新患2人。
だいたい1人30分くらいで勝負しないといけない。
それで新患だとある程度喋んなきゃいけない。
1人は病院から抜け出してきた方で、
右肩や背中がバリバリに凝っちゃてどうしようもない。
病名は多発性進行性脊索硬化症。
そういう診断でどうしようかと考える。
でもやることは同じ。
どんな病名で来てもやることは同じ。
☆身体の見方。
身体には固体、液体、気体という3層がある。
それに無体というか、見えない世界である思想とか哲学とかの考えがある。
結局、身体で見ると、身体を支える器官、骨、筋肉、神経があって、
脳みその方からくる脳神経系という運動性器官となる。
何をしているかというと、餌を捕りにいく、自分が食べられないために逃げる。
食べるか食べられるか、単細胞のアメーバにもある、それが原則。
もう一つは、餌を食べて自分の栄養として高めてゆく。
要するに心臓、血液循環系。
餌を食べて自分の中に同化して、異物は排除して、自分の血肉としてゆく。
これは自立的な機能。
食べるまでは、手で持って動物的な機能でやるんだけど、
ノド元すぎれば、出るまでは自立的な機能。
鳥の淡白質お願いします。と言ったところで植物機能には関係がない。
同じ淡白質だって、鳥で食べようが、大豆で食べようが、
牛だろうが、鳥であろうが、魚だろうが、関係がない。
必要な淡白質だけ取り込んでく。
その植物的な機能はいじれない。
ただ、気持ちよく動く場だけ作ることができる。
休めてあげる。
だから、まずどこで注目するかというと、立っている以上、
2足歩行になっているわけだから、運動器系に目をつける。
脳みそが司令塔で、中枢、脊柱、脊髄。
抹消になると運動神経、そして知覚神経。
筋肉は何かというと、関節、ジョイントを曲げる事。
緩めることは力を抜けばゆるめるわけだけど、
曲げるっていうのはものすごくエネルギーがいる。
逆に拘縮などで一回曲がっちゃうと、伸ばすのは非常に大変。
どちらにしても曲がるというのは大変なエネルギーを使ってる。
★運動の軸性。
解剖的にいえば軸性。
垂直軸あり、矢状軸あり、前額軸あり、この3軸で動いている。
多軸関節も、この3つの方向性で動きがある。
肘と膝の関節は屈曲伸展という、1軸の動きになる。
足関節は屈曲伸展、外転内転となる。
股関節は屈曲伸展と、外転内転と、外旋内旋の3軸になる。
となると身体の中で一番負荷がかかるのは、力の逃げ場がない膝関節。
腕だと肘関節。
それでまず、膝関節の屈曲伸展を見る。
3.治療の実際
☆まず膝の屈曲。
伏臥位で膝を屈曲する。
押すわけじゃなくて、自然に曲げると左右差がある。
そのどちらをやるかというと、曲げにくい方をまず治療する。
一番負荷がかかるのは、地球と接しているのは足の裏なので、
その末端になる指の関節をちょっといじる。
ちょっとだけでも痛いんだけど、軽くやる。
いかに少ないエネルギーで効果を出すか。
そうすると変ってゆく。
左の膝関節、大腿四頭筋の伸展がロックされてる。
次に反対をやる。
★次に股関節の内旋。
もう一つは、膝関節を屈曲して、股関節を内旋させると、どういうわけか緩む。
膝関節の屈曲度を鋭角にすると、脊椎の下位に影響する。
鈍角にすると上部に影響する。
この角度によって脊中のどこに刺激を与えるかというのを考えてゆく。
その他にも足関節にも、膝窩の下、腰腿点、臨泣、足竅陰、中足骨の隙間、
アキレス腱の隙間にもかなり痛いところがある。
☆どんな患者がきてもそう。
癌だろうがなんだろうと、とりあえずこれで楽にしてあげる。
特に腰痛とか筋肉痛がある人はこれで大体良い。
それでだめなときは鍼をするとか。
大体今のだと5分もかからない。
するとせっかく鍼灸治療院に来たのに「鍼も打たないんですか?」となる。
そうすると、ほんとは治ってるんだけど、ちょっと鍼を打つなり、
温灸を置いて、30分くらい寝てもらう。
忙しい人は別として、一応お金を払うのに5分くらいじゃ、
なんとなく治ったという気がしないから30分くらい。
ベッドが4台あれば、1時間に15分ずつ見れるから、
治療は15分、実際は5分、温灸で25分温めておく。
患者がくれば、1時間に4人できるようになっている。
そのくらい治ってゆく。
★首を診る。
仰臥位になってもらって最終的に首を診る。
立て膝で左右に動かしてもらって行きやすい方はあるか?
顔に当てる手拭いは2枚折って重ねる。
1枚だと透けて見えるんで。
横になって寝てしまえば、余計な事はしない。
いかに寝せるか。
寝せるためには、眼瞼を下げてあげる。
眼が上を向いちゃってるので、少し下げてあげる。
そして、コメカミや、首の揺れ具合を3軸を見る。
寝れない人、肩こりの人は、ものすごい乳突筋が張っている。
それから、後頭部に付着して頭を支えてる筋肉が凝っている。
抗重力筋だから寝ていれば働いていない状態なのに凝っている。
ちょっと触っただけでも痛い人がいる。
特に背中がグッと凝ってる人、さっき言った硬化性の人とか。
また、耳を動かしたり、耳の中を手を入れる。
耳に手を入れてるときに「気持ちいいですか?」と聞いても、
全然聞こえてないので気を付ける。結構やってしまう(笑)。
首はフニャフニャになって抜けてゆけば良い。
その抜けないところ、硬いところが見えてくるので、そこを刺激する。
また膝を左右に動かしてもらうと、今度は反対が行きにくい。
☆奥の手。
4つ足なので、足をやったと同じ事を手根骨の腰腿点でやってみる。
これでちょっと動かすと動きやすい。
これで立ってみてもらうと、さっきよりピタッと安定する。
癌だろうとなんだろうと、これで始めれば良い。
これで治らないってことは、相当悪いということを、
患者本人が気付いてくれれば一番良い。
だから「先生、次は何時来れば良いですか?、明日?」
という形で対話ができてくれば良い。
信者にしてゆかないといけない、ということは、標治症を取ってあげる。
即、楽になるということをまずやっていかないといけない。
痛いけど、なんか良くなるな、気持ちよいな、としてゆく。
ただ、凝りはそこにエネルギーが固まっているわけだから、
ちょっと強くやって、一回散らさないといけない、
と考えるのではなくて、軽い刺激で強く感じるところを探す。
一番悪い所を、ちょっと触るだけで効くツボを探す。
そこは誰でも効くツボ。
4.みんなでやってみる
★やってることは上の事を日々やってるだけ。
そうしていると、どうしても、鍼が必要だ、灸が必要だ、温灸が必要だ、
というのが、いろいろ出てくる。
今は鍼灸のライセンスありきだから、刺さなきゃいけない、
という気になるが、まず、触れる事、手当てから入る。
そして、楽にしてあげる。
まず信者にするということだから、触れる瞬間がすごく大事。
☆まずは軽擦。
うつ伏せになって、交替でやってみる。
まずは、背中の軽擦から始める。
背中も置くだけ。
これで診断する。
アイロンがけ。
★次に膝関節の屈曲伸展。
押すんじゃなくて、軽く曲げるだけ。
しずかに持ち上げて、度合い、左右さを見る。
押すんじゃなくて、自然に曲がる感じで。
☆爪先立ち、尖足の状態。
下腿の屈筋が強くて自然に伸びている状態。
伸展筋がゆるんじゃってる。
屈筋群、下腿三等筋の方が働いている。
(モデルの方は)正座が好き。いつも正座。
それは長年の正座習慣というのが情報としてもらえる。
すると「お茶でもやってるんですか?」などと会話がうまれてくる。
そうして、いかに引き出すか。
★足を持ってブラブラ。
恐怖心があると緊張させてしまう。
触れられているところに神経がいかないようにする。
相手の足の重さで、自分の背中がほぐれるように。
術者が気持ちよいのが大事。
そうすると患者さんも気持ちよい。
筋力を使うと疲れちゃう。
☆場を作る。
短期間に効果を出してゆく。
それに鍼だ灸だ、という即効的なツボもあるので適宜使ってゆく。
まずは筋肉運動系、動物神経、機能系を改善してゆく。
左右差を見て、おかしい方をちょっとずつ改善してゆく。
そして、この人に全部まかせていいんだという信頼関係を作ってゆく。
そういう場を作ってゆくだけでも良い。
治ってゆくのは本人が直してゆく。
我々はその切っ掛け、方向性をつけてあげる。
今自分がどう言う状態かということを気づかせてあげる。
そういうのが、我々の役目。
治すというのは、こぼれそうなのを、ちょっと傾きを直してあげる。
傾いてますよ、とアドバイスしてあげる。
「こうしましょう」と、強引にやるんじゃなくて、
自然にそういくように待っているのが、一番良い方法。
状態が悪ければ悪いほど、時間がかかる。
でもまあここに来れば良いんだな、という場所として、
我々が存在していく、というのがすごい大事。
★医者の不養生。
爪先立ちになったときに安定するか?
自分の練習としても、つま先立ちをする。
自分で指を柔らかくする、絶えず練習する。
患者さんにこうやって下さいというのをみせなくちゃならない。
つま先立ちで立って、腰をそのまま落として、蹲踞。
膝を付けて、正座。痛い人は手を着いてもよい。
つま先立ちをすることで首も前後左右が調う。
だから「どうすればよいですか?」と聞かれたら、
よけいなことはしないで、「毎日爪先立ちしないさい」と言う。
その為には自分でモデルとして示してあげないと信頼性はできにくい。
肺癌で煙草吸っちゃいけない、と言いながら、自分は吸っているようなもの。
5.最後に
皆で握手する。
両方手を換えて10人。
☆元気。
患者さんも喜んで、元気も頂ける。
元気を取られちゃうと考えるんじゃなくて、むしろ逆に頂いてる。
しかもお金を頂いて何よりありがたい事。
むしろどんどん出していって、お互いに交流する。
その方法として手を使う。
手を使うときは、絶対に片手だけではなくて、両手で必ずやる。
どっちかを必ず軸にする。
2点刺激で、交流させてゆく、循環させる、出口入口を作るというやり方。
あんまり難しく考えない。
★頭の司令塔。
食べた物を栄養として自立的に循環させる植物的な機能。
餌を取る、逃げるという動物的な機能、その中心が脳ミソ。
植物的な機能はいじれないんで、休まる場、
正常に働く場を作ってあげるというのが大事なこと。
本来自然に働かなくてはいけないのに、
菜食主義とか、ダイエットとか、自然食とか、牛は松坂牛とか、
鳥は名古屋コーチンとか。
一物全体だから魚でも刺身じゃなくて、ちりめんじゃこが良いとか。
でも植物機能は全然選ばないわけで、全部頭でやってる、拘り。
頂けるものは、ともかくおいしく、なんでも食べて、排泄する。
確実に同化と異化やってるわけだから、その作業をさせてあげるのが大事。
☆ともかく触る事。
大事な事はともかく触る事。
前回手創りの会でやったのは、気持ちの良い触り方もあれば、
気持ちの悪い触り方もあるということ。
それが分かっていれば、そうじゃないさわり方をすれば良いだけの話。
何事も差をはっきりさせると良い。
落差をはっきりさせれば、エネルギーが産まれる。
悪ければ悪い人が来たほうがやる気がでるように。
今の状態がすごく落ち込んでいるとしても、
それは逆にいえば、すごい飛躍になる。
落ち込んだまま終わる事はないから。
いいんだか、悪いんだか分からない、中途半端はいけない。
ここがわかれば、自分のエネルギーの出し方、方向性を間違えない。
以上(いしみず)